海水の話
――食塩を正しく摂ろう――
 
 
太平洋の水が酸性化してきている

 

 太平洋の海水が最近、次第に酸性化してきているという。アメリカ海洋大気局(NOAA)と全米科学財団(NSF)の観測によると、今年2月から3月にかけて南太平洋のタヒチから北はアラスカに至る広範囲な海域の海水を分析した結果、水素イオン指数(pH)が15年前よりも平均0.025低下し、同時に海表面の水1kg当たりの無機炭素量が15μmol(マイクロ・モル)増加していたという。これによって、海水酸性化の原因は大気中に増加した二酸化炭素を海水が吸収した結果だと結論している。

 海水のpHは、表層では8.0〜8.2程度のアルカリ性である。水深が深くなるにしたがって低くなり、500〜600mの深層では7.4〜7.6になるが、いずれにしても弱アルカリ性を示す。NOAAなどの調査で表れたpHや二酸化炭素量の変化は数値としては極めて微細なものだが、膨大なボリュウムの海水や大気中の成分がこの程度の変化を示すことは、実は『劇的』な出来事らしい。しかもこれが、地球全表面積の45.8%、全海洋体積の51.6%を占める太平洋で判明したことが問題である(2005年6月4日付け『水はどこにあるか――不足し偏在する水資源』参照)。欧米や、わが国では海洋研究開発機構など研究者たちは早くも数年前から、このような酸性化によって2050年ころにはプランクトンやサンゴなど海洋生物の外骨格からカルシウムが溶け出して種の存続が困難になるなど、生態系への影響を懸念してきた。それが、ここに来て現実となりつつある。

 最近、健康への強い関心から、塩に注目が集まっている。それは、塩の過剰摂取による生活習慣病の話ではなく、逆に、ミネラル不足を補うサプリメントや健康食品としての期待が過熱気味です。

 

 

塩の役割

 

 塩の本来

第一に調味料

第二にその殺菌力を生かして食物を保存すること

味噌や醤油とともに干物や漬物に用いられた。それが肉や魚や野菜の旨みを引き出したり閉じ込めたりするための『嗜好品』となり、更に、今やミネラル分に期待する『健康食品』に期待され始めている。ところが一方では、その旨味の素である『苦汁(ニガリ)』は、実は人体に有害だといい始めた専門家もいる。また、『天然塩』といって売られているものの大半は加工品なのでできるだけ、そ品の正確な情報を取得する事が大切。そんな塩を料理に上手に使う認識に大きな誤解があることも指摘されている。

 

 
 
 『塩(しお)』とは一体何なのか、今、持て囃されている『天然塩』なるものは一体どういうものなのか

 

 ミネラル(mineral)とは名のとおり無機質の『鉱物』のことであるが、必ずしも金属だけを指すわけではなく、食塩もミネラルだから誤解や誤用のないように、確認しておく事が必要。

栄養学上では、人体に必要な食品成分中の無機質をいい、もちろんナトリウムも塩素も含まれる。だから、自社の商品にミネラルを『命の素である微量元素』と謳ったりすることは用語用法上正しくないかもしれない。

 

  表-1は、海水中成分上位10種類の平均的な元素濃度。

 
表-1 海水中に溶解する代表的10元素
成分元素
 
平均濃度
(mg/kg)
塩素(Cl) 18,980
ナトリウム(Na) 10,556
マグネシウム(Mg)  1,272
硫黄(S)   884
カルシウム(Ca)   400
カリウム(K)   380
臭素(Br)   64.6
炭素(C)   28.0
ストロンチウム(Sr)   13.3
ホウ素(B)    4.6
 
 その他に珪素(Si)や鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)、ヨウ素(I)、鉄(Fe)、銅(Cu)、リン(P)などなど、地球上のたいていのミネラル類が含まれている。この他に二酸化炭素(CO2)や酸素(O2)、窒素(N2)など気体も溶け込んでいるが、この中で、毒性があるフッ素やホウ素の濃度は自然状態ですでに環境基準値を上回っているため、海域には環境基準が適用されない。また、海水の影響がある河川・湖沼にある環境基準点も評価から除外されることになっている。

 

 この表から分かるように、海水中のミネラル分は、塩辛さの素であるナトリウムと塩素の量がダントツで、マグネシウム以下の『苦汁(ニガリ)』成分はケタ違いに少ない。これをイオンでみても、海水の塩分を3.5%(35‰)とすると、ナトリウムイオン[Na+]と塩素イオン[Cl-]で全成分の85.7%を占める。更に、これらにマグネシウムイオン[Mg2+]、カルシウムイオン[Ca2+]、カリウムイオン[K+]、硫酸イオン[SO42-]を加えた6成分で99.4%に達するという。その他は炭酸水素イオン[HCO3-]、臭素イオン[Br-]、ストロンチウムイオン[Sr2+]、ホウ素イオン[B3+]、フッ素イオン[F-]などで、これらを合わせた上位11種のイオンで海水に溶け込んでいる成分の99.99%を占めるという。つまり、海水の『味』を決めているのは、これらの代表11イオンの組み合わせでできる物質ということになる。美味しい食塩を求めるためには是非このことを覚えて、偽物に騙されないように気を付けて欲しい。
 
食塩はなぜ不味いのか
 海水を煮詰めて水分を飛ばすと茶色の結晶が残る。これをそのまま舐めると舌が縮み上がるほど苦い。『苦い』というよりも、ひどく『エグイ』『渋い』。

したがって、これはこのままでは料理には使えない。この中から食塩(NaCl)分を取り出した残りが『ニガリ』で、『苦汁』とか『苦塩』とか書くように苦いもので、豆腐を作る過程で凝固剤として使われる。

 
 

表-2に、海水から採れる結晶成分を示す。

 

表-2 海水中の結晶成分
物質(ミネラル分) 含有率(wt%)
塩化ナトリウム [NaCl]
塩化マグネシウム[MgCl2]
硫酸マグネシウム[MgSO4]
硫酸カルシウム [CaSO4]
塩化カリウム  [KCl]
その他
  77.9
  9.6
  6.1
  4.0
  2.1
  0.3
 
 ここで『wt%』とは『重量百分率(weight percent)』で、100グラムの水に何グラム溶けるかを表して『質量%』といっている。これが体積比なら『容積%(vol%)』。
 

 『天然塩』などと銘打って売っている塩は、いったい何物なのだろう。海水中のミネラルの塊である苦汁(にがり)が苦くて料理に使えないのなら、これらの『天然塩』は『天然物』ではないに違いない。もし、本当に海水から水分を飛ばした残りの固形物であれば、商品の袋に表示されている成分表は『表-2』と同じでなければならない。

 原料に岩塩を使っているから――そんなことはない。岩塩だって立派な苦汁の塊だ。いや、きっと遠い昔の海水はおいしくて、岩塩はそれが干上がったものだからえぐくないのだ――そんなこともない。後で説明するが、先に話した海水の主な化学的成分組成は、地球ができた46億年前から、いや少なくとも生命が誕生した38億年前には現在に近くなっていて、少なくとも6億年くらい前から今まで、ほとんど変化していないというのが専門家の共通した認識なのだ。
 
 
 塩(NaCl)は塩辛い。
 塩化マグネシウム(MgCl2)や硫酸マグネシウム(MgSO4)などマグネシウムの化合物は苦みの主成分で、豆腐を作るときに使う苦汁(ニガリ)の主成分でもある。
 硫酸カルシウム(CaSO4)などのカルシウム化合物は薄いエグミを持っているが、それ自体はあまり個性的な味はしない。しかし、これが食塩にある程度含まれると、全体の味をやわらげ、まろやかにする働きをする。
 塩化カリウム(KCl)などのカリウム化合物は薄い酸味を持ち、ときに、金属を舐めたときに感じるような軽いエグミを感じるヒトもいるという。
 このように、苦汁を構成する成分は、それ自体単独では味覚的に快感を与えるものではない。しかし、これらの成分を選別し、適量を残すと、塩辛いだけでなく、複雑な塩味と独特の甘さを感じる豊かな味の塩ができる。つまり、市販の『天然塩』は、人間の舌に合わせて成分を調整した『人口調味料』なのではないだろうか、という疑問が湧き上がる。

 

つまり天然だから旨いという事ではなく、現在では天然だから安全という事でもない。商品の表示方にも問題があり、その中から正しい商品を選別する事が必要になってくる。

 

 

『天然塩』は本当に『天然もの』か

 

 1905年に専売制となり1997年4月に廃止されるまで日本専売公社以外では自由に生産・販売ができなかった食塩は、この年から塩事業法の施行によって生産・輸入が自由となり、特殊用塩として専売ルートを通さずに販売ができるようになった。この食塩は『自然塩』と呼ばれて市場に拡大し、2002年4月の全面自由化を境にして多くの企業が塩事業に参画し、折から消費者のグルメや健康志向も寄与して自然塩ブームにつながった。日本専売公社が民営化して日本たばこ産業(JT)の塩事業部となったのは1985年。
 『天然塩』は、本当に『天然もの』なのだろうか。

 

 先ず、市販されている『塩(しお)』の種類を、それらの製造方法から大きく仕分けしてみると、
 ・『天日塩』をイオン交換膜を通し、ほとんど塩化ナトリウムだけを取り出した純度の高い『精製塩』で『化学塩』と呼ばれるもの。食塩、並塩など
 ・輸入した天日塩や岩塩を溶かし、苦汁や添加物を加えて釜で煮詰め、再結晶させた『配合化学塩』と呼ばれるもの。市販の『天然塩』表示にはこれが最も多いらしい
 ・海水を原料にして太陽と風だけで水分を飛ばし結晶させたもの。本当に『天然塩』と呼んでいいもの。粗塩(あらじお)など
 一般に市販されている『食塩』は、原料は天日塩であるが、昔のように筧(かけい)に流して濃縮するような塩田は現在はほとんど見られず、工業的にはイオン交換樹脂膜という特殊な膜を通す化学的製造過程で塩化ナトリウム(NaCl)以外の『不純物』つまり苦汁成分を除去・精製し、99%くらいの純度にする。専売制の中で1971年4月に塩業近代化臨時措置法が施行され、それまで行われてきた塩田製塩が全面的に廃止されて、食塩はイオン交換膜海水濃縮法による製塩に切り替えられたのである。すなわち『精製塩』であって、『化学塩』と呼ばれる『人工塩』である。『化学塩』とはいうが、家庭用は勿論、工業用でも食塩は海水あるいは岩塩を原料としたもので、試薬など特殊な用途以外は化学的に合成されたものはない。
 化学塩には、この他に、この精製塩にグルタミン酸ナトリウムなどを加えて化学調味をした『味塩』といったようなものがある。
 『海水の化石』ともいえる岩塩も、眠っている長い間に微量ミネラル分が失われてしまい、昔の海水の成分がそのまま残っているわけではなく、成分上からは塩化ナトリウム以外のミネラル分をほとんど含んでいないものが多いらしい。しかしながら、こちらは勿論『天然塩』である。
 専売公社の後を受けた塩事業センターが扱う家庭用塩で『原塩』と表示してあるものは、海外の塩田で作ったものだそうだ。
 このように、『天然塩』には、『自然海塩』と『岩塩』とがあるようだ。
 ならば、『にがり成分配合』とか『天然海水から作った粗塩(あらじお)』などといって売られているものはどうなのだろう。買ってきた『天然塩』などと称する袋や容器の成分表示を見ると、確かにこれらの多くは、普通の食塩(精製塩)と比べれば塩化ナトリウムが90%程度に減り、塩化マグネシウムなどの苦汁成分が多く含まれているようだが、先に表-2で示した本来の海水成分にはほど遠い。なぜなら、本来の海水成分と同じにすれば、苦くて食用に供することができないからだ。ただし、一部には、本当にほとんど成分調整をしていない本物の『粗塩』も販売されているのだそうだ。
 『自然海塩』の中で、オーストラリアやメキシコの大規模塩田のほか中国や韓国など雨の少ない気候を利用し、塩田に引き入れた海水を風と太陽だけを利用して1〜2年かけて蒸発させ、人手による加工を一切加えずに乾燥して自然に結晶を作る『天日塩』がある。結晶が比較的大きく、したがってまろやかに感じる。
 自然海塩には、このような『本物の天日塩』のほか、完全な天日塩を海水で溶解して平釜で煮た『平釜塩』、輸入天日塩をミネラル豊富な地下水で溶かしたり苦汁を加えたりして再度煮詰つめた『再生自然塩』などというものもあるらしく、この3種だけが『真の自然塩』だという人もいるようだ。
 『岩塩』には、文字どおり岩のように硬く鉱床になっているものばかりでなく、結晶はしているが軟らかいもの、濃い塩水の状態のものなど、いろいろな状態のものがある。
 
 
袋の表示に注意をしなければならない
 何でもグルメ好きの日本人。自分の味覚を信じず、他人(ひと)が美味しいといえば自分も遅れじと真似をする傾向がある。さらに日本人は何事も、値段が高いものは良いもの美味しいもの高級品、と思い込む傾向から、自分独自の評価基準を持たない人が少なくない。

 『値段の高い塩にはミネラルがたくさん含まれていて美味しいし健康にもいい』というものではありません。、食塩もミネラルだし、それ以外の苦汁成分を混ぜ過ぎるとひどい味になる。さらにに摂り過ぎは、弊害すらある。それでもテレビ番組が『今や塩は使い分ける時代』などと煽り立てると、正しい情報が伝わらない事もある。

 

 このようにこの食塩、家庭用食塩は1997年に専売制度が廃止されて以来、産地やミネラルなどを強調した商品が増え、今や市販の半数を占めるようになった。そこで2004年9月、東京都と業者などが作る『食塩表示適正化連絡会』は、市販の際に『自然』とか『天然』とかの表示を付けること禁止、という指針を発表した。食塩は天然が当たり前で、殊更強調すると混乱を招く、というのだ。また、ミネラルの効用を強調することについても、食塩に含まれるニガリ成分は微量なので、これも使わないよう自粛するという。
 また2004年7月、公正取引委員会は、外国産の塩を使っているのに『赤穂』や『伯方』など名産地の名を使っている業者に対して景品表示法違反・優良誤認で警告した。メキシコ産などの塩を赤穂周辺の海水に一度溶かして再び結晶させたりしていたのだ。オーストラリア産を沖縄産として販売した例もあったので、そういう商品は確認しておく事。
 
 念のために、インターネットで販売されている幾つかの『名産地』の塩の成分を調べてみると、その結果には可成りのバラツキがあって、マグネシウムが100g中0.3〜0.18g程度、多いものは2.8gというのもあった。また、カリウムは0.25〜0.5g、最大で0.8g、最低は0.07g、カルシウムは0.4〜0.6g程度、多いものは1.2gであったが、いずれもナトリウムに対する比は海水よりも極めて少ない。つまり、海水をそのまま濃縮したのでは苦汁が強すぎ、『旨い』塩にならないことを示している。その他、鉄1.61mg、マンガン2.73ppm、亜鉛1.85ppm、総クロム1.1ppm、銅0.15ppmなどを表示しているのもあるが、『ppm(=parts per million)』つまり100万分の1オーダーの含有量に味覚上どのような有意性があるのか、これまたハッタリ臭い。また、表示が『塩化ナトリウム』なのか『ナトリウム』換算なのか、他のミネラル分は『硫化物』などの化合物か『元素』換算なのかそれとも『イオン量』なのか不明確なものが多く、これではもっともらしく数字を並べてあるに過ぎないし、その数値自体も『桁数』など疑問なものもある。これでは消費者には、どの項目の違いがその商品の味の特徴を出しているのか、訳が分からない。
 ところで、宣伝では、
「その食材の味を引き立ててくれるので、どんなお料理にもご利用いただけ、深い味わいとまろやかな甘みを感じることができます」
 という。では『どんなお料理にも』というのだから、『振り塩』でなく『煮物』のことを考えよう。今、水1リットルが入った鍋にこれらの塩を1g入れて煮物をするとしよう。ある長崎県産の『天然塩』が1g中に含む成分濃度は塩化ナトリウム0.814g、カリウム4.90mg、マグネシウム3.30mg、カルシウム0.0118mgとなっているから、これを水1リットルで薄めるとそれぞれ食塩0.814mg、カリウム4.90μg(マイクロ・グラム)、マグネシウム3.30μg、カルシウム0.0118μg、つまり11.8ng、いま流行りの『ナノ』、10億分の1グラムの単位にまで薄められる。この単位を利き分ける味覚をヒトが持っているか。素材の味に混ざって『食材の味を引き立て』何か効果的な味を付加するのか。どう考えてもヒトの舌に感じ分けられるほどの量ではないと思う。食材に含まれているミネラルの方が、よほど多いに違いない。ヒトの舌がどれほどの濃度まで感じ分けられるものか、専門家に聞きたいと思う。
 なぜ日本人は、こうまでして『天然』とか『手作り』とかの宣伝に弱いのだろう。機械化されて大量に量産される商品は優れた品質を一定に保つものになる。これに対して本来、『天然物』とか『手作り』などの製品は一品ごとに品質が異なり、よくいえば『個性』があって面白いが品質は不安定である。そして塩についていえば、最大の問題は、これらの特殊な商品に含まれる『食塩(NaCl)』以外の成分は、本当の海水に比べて極めて微量だということだ。つまり、明らかな加工塩である。しかもこれらの塩には、使用上でどうしても知っておかなければならない味覚と健康上の問題がある。
 
 

 

市販の食塩を『うま塩』に作り替える
 では、塩の旨味を決める要素は何なのだろう。
 NHK『ためしてガッテン』で2006年4月19日に放送された『大発見! 塩の新活用術』によれば、国産JT食塩とフランスはブルターニュ地方で作られた超高級(つまり超高価:1kg 6,000円?)の塩を舐めてみると、明らかな味の違いがあるという。ところが、塩の名産地・高知県黒潮町で4種類の塩の食べ比べ実験をした結果は、塩の味がわかるプロである『塩マスター』だけが、それぞれの塩の特徴を利き分けて好成績を収めたが、地元の一般のオバサマたちは、一度食べた塩を当てるだけでも苦戦したという。これらの塩の組成を比べるとミネラル成分が2〜3%しか違わず、プロでも味の違いがようやくわかるくらい繊細なもので、幾らグルメぶっても素人では全くといっていいほど味の違いは分からないということだった。
 この番組の結論を先にいうと、主婦が『おいしい』と感じる塩の効果は結晶の大きさだけによるものだという。ヒトの舌は、塩が溶けた状態で初めて塩辛さを感じる。結晶の大きいものほど溶ける時間が長いため、舌の味蕾(みらい)で感じる塩辛さは、時間の経過によってゆっくり『ジワッ』と感じる、これが『うまみ』の原因なのだそうだ。これに対して精製された食塩の方は結晶粒が小さく、舌に乗せたとたんに溶けて辛さを感じるため、『余韻』のない『ウワッ』というような直情的な辛さになるらしい。このように、結晶の溶ける時間の差が塩辛さや味の違いとして感じられるのだと専門家はいう。
 その証拠に、この番組での食べ比べ実験で、どんな料理だと『塩の味の差』がわかるか試したところ、ポテトフライとカツオのタタキは100%わかり、サイコロステーキは75%、おにぎりで50%、キュウリの塩もみで25%という結果になった。つまり、食べるまでの時間が短いタイミングで塩を振って使うと塩の味を楽しめるが、いくら高級塩(=高価な塩)でも塩の結晶の形が残らない状態、つまり煮物などで溶かして使えば『ただの塩』ということになる。またミネラルは、ビタミンのように熱で壊れることはないが水には溶けるから、折角の高級塩が調理で流れ出てしまうことはご承知あれ。
 そこでこの番組では、市販の食塩にちょっと一手間加えるだけで、食べ比べをした『塩マスター』達もフランス・ブルターニュ産と間違えるほどの超高級塩が完成した。それは、この普通の食塩を水で一旦溶かし、その後時間を掛けてゆっくりと再結晶させると結晶粒が大きく生長し、専門家も唸る『うまい』塩に変身するのだそうだ。
 ただし、結晶が大きくなると口の中で溶ける時間が長くなるため、食べたときに塩味が不足するように感じ、ともすれば量を多く使いがちだから健康には疑問であると、この番組は忠告している。
 それともう一つ、『潮解性』といって、塩、特に苦汁成分の中でも塩化マグネシウムは吸湿性が高く、空気中に放置すると湿分を吸収して溶けてしまうことは日常生活で経験することだ。そこで和食の達人は粗塩をまず鍋に入れて加熱し、サラサラな状態の『焼き塩』にして使うのだとか。
 

苦汁はからだに悪い?

 食塩は人体を健康に維持するために必須のミネラルである。しかし、これが過多になると血栓を作ったり、血管収縮を引き起こして脆くしてしまうなど、動脈硬化に似た悪影響を及ぼすことが知られている。極めて高温の環境で働くなど多量の汗を流す作業に従事する人やスポーツ選手のような特殊な例を除き、一般人の食塩摂取量の目標を、厚生労働省は1日当たり10g以下、高血圧学会は6g以下としている。
 ところで1980年ころ、体質によっては塩分を摂り過ぎても大丈夫、という説が発表された。『食塩感受性』と呼ばれ、体質的に、同じ量の塩分を摂っても血圧上昇の程度には個人差があることが報告されたのだ。日本人でも、50〜70%の人が塩分を摂っても血圧が上がりにくい『食塩非感受性』の人がいるといわれる。ただし、自分がどちらかを見分けるのは難しく、その後、
 ・長期的に塩分過多だとやはり高血圧になる
 ・食塩非感受性の人でも高血圧になる。その場合、塩分を取りすぎると薬の効きが悪くなる
 などの問題があることも分かった。現在では、体質にかかわらず塩分の摂取量は控えた方がいいというのは、大多数の医師の共通認識である。
 ところが最近、苦汁(にがり)が糖の吸収を遅らせ糖質代謝を促進するとか、脂肪の吸収をブロックするだとか、ダイエット効果が宣伝され、健康食品としてもブームとなっている。天然苦汁の『ミネラル分で麦芽を発酵』させて作ったという発泡酒も売り出された。味わいはコクがあり、飲み心地はスッキリした仕上がりで、マグネシウムはアルコールの分解を早めるので酔い覚めが心地よいとか。しかし、いっておくが、『ミネラル分で麦芽を発酵』させることなど、できないと思う。
 ところで、この『苦汁』、摂りすぎは健康被害の恐れがあると警告している研究機関がある。独立行政法人・国立健康・栄養研究所が2004年7月14日、ダイエット効果は根拠がなく、摂りすぎに注意するよう呼びかけたのをご存じだろうか。苦汁の主成分である塩化マグネシウムは、医薬品としては下剤として使われるように、下痢によってビタミンやミネラルの吸収を阻害する危険があり、現に、摂取量を誤って重大な健康被害が出た例があるという。つまり、苦汁によって痩せるのは病的だ、というわけだ。
 健康に神経質で感受性が高い割には、その反対側でダイエットだとか食塩ブームだとか訳も分からずに不健康なことをする日本人――もう少し勉強して利口になろうじゃないの。塩分過多の方が問題でしょうが。
 ミネラルは野菜・海藻・小魚に多く含まれている。穀類では胚芽の部分に多い。米の場合は精白して糠(ぬか)として捨て去っているが、基本的にはミネラルは食物から摂ればいい。三度三度、偏らない、多様な食材を食膳に乗せることこそ健康の基本である。
 
 
ミネラルバランスって、何?
 海水と同じ『ミネラルバランス』の塩を食したところで、ヒトの体液がそのままのバランスに保たれるという保証はない。ヒトの体液成分が海水に似ているとして、その商品を食することが一体どういう意味を持つのか、『ミネラルバランス』や『質の良い塩』の評価基準ととはなっていない。
 
食塩はサプリメントなのか
 先に話したように、海水中の苦汁成分、つまり食塩以外のミネラル分は多くの場合味覚を損なうため、調味料としては邪魔であるとして削減・調整されている。「さすが天然塩は美味しい」と、グルメと称する人たちは感動するらしい。では、真の天然塩、つまり海水から純粋に水分だけを除いた塩が本当に美味しいのなら、わざわざ手間暇掛けて水分を飛ばし粉末にする必要はない。海水そのものが調味料に使えるはずではないか。しかし、溺れて海水を飲んだ人が「ああ、美味しかった」といった話を聞いたことがないし、濃縮海水を売っているのを見たこともない。塩の美味しさは結晶粒の大きさによることを、もう一度ここで思い出して欲しい。
 人一倍健康や衛生に神経質な国民性を持つ『勉強家』の日本人は、企業が「身体バランス機能を調節するのに必要なマグネシウム、カリウムなどミネラルが現代人に不足しがち」といえば「ああ、そうか」と直ちに納得し、「何らかの対応を考えないとミネラル不足を解消できない」といわれると、この欠落が多くの病気を誘発すると怯え、それを調味料である『塩』からも補おうとする。本当はそれこそが問題だ、とは思わないのだろうか。
 確かに、人の体重の約2%を占めているというミネラル分は、骨や歯、血液やリンパ液、ホルモンなど人体の構成成分であるばかりでなく、細胞のバランスをとり、体温や血圧を正常に維持し、血液のpHを弱アルカリ性に保ち、消化など体内の化学反応の媒体となる酵素の作用や、代謝調整、生理作用、神経や筋肉の動きに係わっていて、生命維持に欠かせない栄養素である。中でもマグネシウムは約300種類の、亜鉛は約250種類の酵素の働きを助けているという。
 栄養学的に人体に必要なものはカルシウム、鉄、リン、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、塩素、ヨウ素などで、いずれも微量であるが生理学的意味は大きい。カルシウムと鉄以外は普通の食品に必要量が十分に含まれているといわれるが、鉄は、摂りすぎると触媒作用によって体内に活性酸素の発生を促し、老化の原因になるとか。鉄分は食品によって体内吸収率に差があり、野菜や穀物に含まれる非ヘム鉄が2〜5%程度なのに対し動物性食品に含まれるヘム鉄は15〜25%と高い。したがって特に赤身の肉を沢山食べると鉄分が過剰になり、肝臓や膵臓、筋肉などに蓄積して臓器の細胞に障害を与え、更には糖尿病や動脈硬化の進行を早めて心筋梗塞を起こし易いという。また、皮膚に蓄積して紫外線による皮膚の老化を加速するのだそうだ。貧血でない人が自分の判断で鉄剤を服用するなどは厳に戒めるべきだろう。
 参考までに、塩分に含まれる主なミネラルの人体に対する作用を簡単に並べると、
・ナトリウム[Na]:細胞外の体液にあって、無機質の濃度、細胞膜浸透性を調節し、体液をアルカリ性に保つ。
・マグネシウム[Mg]:半分が骨組織にあるほか、筋肉細胞にも多く含まれ、媒体として体内の酵素活性に作用、心疾患を防ぐとして最近注目されている。骨の細胞に働きかけてカルシウムの量を調節していて、マグネシウムが不足すると骨にカルシウムが行き渡らなくなり、骨や歯に蓄積された分から放出される。マグネシウムの3倍以上のカルシウムも同時に放出され、その部分の骨が脆くなってしまう。骨が脆くなる原因はカルシウム不足といわれているが、マグネシウム不足にも気をつける必要がある。また、足がつったときマグネシウムとカルシウムが入った錠剤を飲むと数日で足がつらなくなるという。足がつるといった症状が出た場合は体全体がミネラル不足になっていると考えられ、そのまま放っておくと血管筋や心筋に影響を与えるようになり、狭心症や心筋梗塞の引き金にもなるのだとか。
・カリウム[K]:心臓機能や筋肉機能を調節し、表皮の水分バランスを保持する。ナトリウムとともに相互のバランスをとりながら神経や筋肉の機能をコントロールする働きがある。 
・カルシウム[Ca]:体内で最も多いミネラルで、90%は骨や歯の成分に、残りは血液、筋肉、神経等の組織にある。不足すると血管の結合組織同士の結合が粗くなり、古いゴムホースのように弱くなる。筋肉はカルシウムがあって初めて収縮できる。血液をアルカリ性にし、凝固作用にも関係する。実験では、血中のカルシウム濃度が低下すると犬でも猿でも気が荒くなり喧嘩しやすくなるらしいので、ヒトもそうだという『俗説』があるが、ヒトで検証したという話は知らない。最近の研究では、カルシウムを毎日800mg(牛乳にすると約0.8リットルに相当)以上摂ると大腸癌になる危険性が約30%低下するという。
・亜鉛[Zn]:味覚障害がよく知られている。
・ヨウ素[I]:甲状腺腫は世界的に、海から離れた地域に多発するヨウ素欠乏症である。海藻に最も多く含まれ魚介類にもあるが、その他の食品には極めて少ない。ただし、北海道沿岸住民のように、過剰に摂取しても甲状腺腫になる。一日の許容摂取量の上限はアメリカ栄養評議会など外国では1mg、日本の場合3mgとされ、日本の食生活では欠乏の心配はないとされるから、海草の食べ過ぎは禁物である。
・ホウ素[B]:毒性は弱いが、高濃度のホウ素を含む水を摂取すれば嘔吐、腹痛、下痢、吐き気などが生じる。環境基準値は1mg/L以下となっている。
・フッ素[F]:虫歯予防に用いられるが、単体では活性が高い元素で毒性が強く、高濃度のフッ素を含む水を摂取すると斑状歯が発生するほかフッ素沈着症を生じる。環境基準値は0.8mg/L以下。
 
健康食品による健康被害
 いわゆる『健康食品』の摂取が原因と疑われる健康被害の報告例が増加し続けており、死亡事故まで起こしている。
 今年2月、藁にも縋りたい癌患者に朗報をもたらしたといわれてきたアガリクスが、不用意とも思える厚生労働省の発表によって、全てのアガリクスが逆に発ガンを促進するという一種の風評の基になり、パッタリと売れなくなって倒産する企業が続出しているそうだ。骨粗鬆症や更年期障害などの予防効果があるといって人気のある大豆イソフラボンも今年5月8日、内閣府食品安全委員会専門調査会が一日の摂取量に70〜75mgの上限を設け、食事以外のサプリメントなどから上乗せして摂取する場合には30mgの上限を、妊婦や乳幼児については上乗せしないことを決め厚生労働省に答申した。特にイソフラボン入り味噌については上乗せ分が上限を超えるので、十分な安全性が確保されるとは言い難いとした。
 そして、これを機に厚生労働省はやっと、特定成分の過剰摂取による健康被害を未然に防ぐため業界の指導に乗り出す方針を決めた。しかしながら現在、法的規制はないから、摂る摂らないの判断は依然、個人に任せられたままでいる。だから未だ、イソフラボンの効用を強調し、それを大量に含むことを自慢するCMがテレビに流れ続けている。
 また、抗酸化作用があるとしてサプリメントにも利用されるセレンは、最近の研究によれば、睡眠ホルモンができるのを抑制する効果があることが分かった。したがって、セレンの過剰摂取が不眠を引き起こす可能性があるという。セレンは農作物や魚に多く含まれるので、不用意にサプリメントを摂ることは注意しよう。
 どんな食品にでも『健康』を謳うだけでヒット商品になるといわれ、メーカーは『機能』を売り込むのに懸命である。今、健康食品市場の規模は約2兆円とも2兆7,000億円ともいわれ、その1/3を特定保健用食品いわゆる『トクホ』が占める。日本健康・栄養食品協会の推定では昨2005年度、『トクホ』の表示許可を受けた600品目近くで約6,300億円を売上げたとか。その主役は『整腸』がこれまでの80%から60%に落ちたとはいえダントツの1位、『中性脂肪』と『歯』がともに15%、これに対し『コレステロール』や『血圧』関連が台頭しつつある。間もなく、必ずしも科学的根拠が確立していなくても『条件付き特保』なる商品もお目見えする。
 健康食品に天然量を遙かに超える重金属などが含まれているものがあることは、今から20年ほども前、1988年7月29日に総務庁がまとめた『食品衛生に関する行政監察』で既に明らかにされていたことだ。そのころ、健康食品に関する苦情や相談が急増し、監察で分析した結果、痩せる食品では中毒症状が44.6%、ビタミン類ではかぶれなどの皮膚障害が42.6%と多数を占めた。また天然食品を濃縮加工した健康食品では、梅をエキスにしたものから、他の食品で用いられている基準の4.7倍の2,330ppmという高濃度の遊離シアン(青酸)を、昆布のエキスでは天然含有量の3.4倍の1.3ppmの鉛を、シジミのエキスでは同じく32.1倍の40.8ppmのヒ素を検出した例があり、製品の回収や廃棄措置がとられた。
 それから20年、健康食品が原因と疑われる健康被害はなお、後を絶たない。今年2006年、厚生労働省の集計によれば、被害者の76.6%が女性で、うち36.7%が肝機能障害を起こし、劇症肝炎で死亡した例も1件あった。そのほか4.3%が、甲状腺、肺、呼吸器などの機能障害で入院した。2002年7月に中国製ダイエット食品による健康被害例が出てから今年3月末までの3年9ケ月間の統計で、多くは外国製のダイエット効果を謳うものだが、国内大手もあったという。
 栄養学の専門家の間で指摘されることは、増加するサプリメントや健康食品の摂取で特定の栄養素を摂りすぎ、栄養素の摂取バランスが崩れ、本当に必要な栄養素の吸収が妨げられる事態が増えているというのだ。そのため、例えば骨粗鬆症などの対策で効果が阻害されることがあるのだそうだ。サプリメントは、規則正しい食生活があってこそ生きるものなのだ。
 清潔好きも健康志向も結構だ。しかし『健康食品』とは法律上の定義がなく、その中には通常の食習慣よりも200〜1,000倍の特定成分を増量しているものもあるというのに、国には実態を把握するためのシステムもなく登録制もない野放し状態である。だからメーカーすら把握できず、外国製品の輸入の監視も統計もない。にもかかわらず、医薬品のように、臨床試験など厳密な安全性の証明や国の審査を受ける必要がなく、メーカーが勝手に効果や機能を表示していて、含有量の多さを競う傾向すらあり、消費者もまた、それを求める。多くの日本人は、自分自身では何のデータも持たず、「いい」といわれれば根拠もなく飛び付く特異な行動性向を持った人種である。しかもその情報入手先は大抵、友人かテレビ・週刊誌などマスメディアだ。わたしの専門分野の中にある海洋深層水についても万能薬のようにいわれ、際限なく効能が広がって新しい商品が出てくる。
 東京都健康安全室の試買調査によれば、健康食品の表示違反は毎年80%前後で推移し、うち40〜60%が薬事法違反であるという。日常生活のままでは健康維持に自信がなく、これらの商品に過大な健康効果を期待する消費者を格好の標的にして、メーカーは次々と新たな商品を大衆の不安を煽り立てるキャッチコピーとともに送り出してくる。消費者は、無分別にそれに殺到することが自爆行為であることに早く気付かなければなるまい。
 ちなみに、厚生労働省が提示する食品成分の一日摂取基準は、1か月当たりの望ましい摂取量の1日平均値である。1日1日に多少の偏りがあっても、その日の内に何が何でも健康食品やサプリメントで補充しなければならないというような絶対必要量ではない。
 『健康寿命』というのがあるらしく、人が大きな病気をせずに過ごせる年齢なのだそうだ。それは女77.7歳、男72.3歳で、男女ともに世界一だそうだが、政府はこれを2年延長する目標だとか。これと平均寿命それぞれ85.49歳、78.53歳との差7.7歳と6.2歳が老後、死ぬまでの療養期間となるわけだが、何と長いことではないか。定期的な健康診断やジムなど、健康のために消費を増やすのは結構なことだ。しかし、それが無知で過剰なサプリメント摂取のための消費であっては困る。この分の出費を健全な食習慣と体力維持に回すことを考えることはできないのだろうか。
 地球上で生きる生物は全て、ミネラルを吸収して生きている。ヒトはそれらを動植物から食物として『詐取』して生きている。ところが最近、本来は調味料であったはずの『塩(しお)』が『健康食品』として喧伝されるようになり、果ては医療効果まで謳う商品までが出現した。いわく、苦汁(にがり)に含まれるミネラル成分は免疫力を高め、
「すべての癌(ガン)の成長を抑え完治」
「糖尿病、脳梗塞、高血圧からの解放」
「アトピー・花粉症を簡単解決」
「O-157による食中毒の汚染からも無事」
「化学塩が想像もしない現代病をもたらす」
「『キレる』『グレる』など非行の精神的な面をも克服」
 などなど、大変なことになりそうな勢いだ。中には『天然ミネラル』まで登場して、『自然』『手作り』に弱い人を誘い込もうとする。
 今のところ食塩は、健康への有効性や安全性に関する厚生労働省基準である『保健機能食品』のラベルは付されていない。それを、あろうことか、疲労回復、ダイエット、癌抑制などの効能を謳って消費者の期待や願望に付け込む誇大広告が目立つのは困ったことだ。ミネラルの効用よりも塩分の摂取過多の方を心配するのだ。本当にミネラルが必要なら、塩以外から摂ることを考えるべきだろう。また、食塩もミネラルであることを、繰り返し強調しておく。
 いうまでもなく食塩は人体に必須の食品で、人の生活になくてはならないものである。しかし、中国前漢書『食貨志』に『塩は百肴の将、酒は百薬の長』とあるように、それが許されるのは『嗜好品』までで、『サプリメント』になってはならない。ミネラルは沢山摂れば良いというわけではないからだ。
 食塩に限らず、いずれこのシリーズで取り上げるつもりの海洋深層水や天然水やマイナスイオンなど、何の知識もなく風評だけで『これは良いものだ』と簡単に『洗脳』されるこのような無駄遣いを、わたしは『無知に基づく浪費』と名付けている。食塩やサプリメントの場合、これは単に『浪費』にとどまらず、『無知に基づく不健康』になることを肝に銘じておこう。